第1回「病院DXアワード」(CBnews主催)で、初の大賞に輝く、製品・サービスは-。続々とエントリーが集まる中、4人の審査員に、病院DXへの思いを聞いた。最終回は、医療法人徳洲会湘南鎌倉総合病院事務長の芦原教之氏が、医療現場とDX企業との意思疎通の重要性を語った。
病院側とDX関連企業側の商談は、日本語と英語でコミュニケーションをやっているくらいのずれが生じていると、感じることもあります。両者の意思疎通には、医療現場の声を企業側に正確に伝える「通訳」となる人物が必要です。こうしたずれをなくすため、当院では、院内に現場と企業の「通訳」を担う「デジタルコミュニケーション室」を設け、専任の担当者を置いています。
企業からのDX提案を、ここが窓口として受けます。そして医師や看護師が求めているものを聞き取り、現場の要望を企業側が理解できるように伝えます。さらに企業側からのメッセージを、医療現場に伝わるようにし、さらなる改善につなげていっています。こうした双方向のやりとりを継続することで、残念ながら少なくない企業側の「売りっぱなし」を防ぎ、DXにつなげています。
DXは新たな収益を生むための投資です。例えば、業務の一部をDXによって効率化することで生まれた余力を活用して、新たな収益を生み出すというサイクルを整備することが重要です。デジタル化で人の作業が減り、コスト削減につながることも大切ですが、それ以上に、新たな収益を生むための基盤整備としてデジタル化をとらえることこそがDXへの一歩と考えます。
企業は、臨床領域のDXに大きな投資を行い、現場のニーズにあったロボット、AIなどのシステムを開発することに注力します。これは病院経営サイドからも保険請求できることから、大きなメリットとなり積極的協力を行う傾向があります。しかし、非臨床領域においては、企業は出来合いのロボット等を提案する傾向があり、現場ニーズとは嚙み合わないものとなり、非臨床領域のDXは進みにくい傾向があります。病院は、非臨床領域におけるニーズをしっかりと企業側に伝えることも、DXには欠かせません。そのうえでも、当院はデジタルコミュニケーション室の役割を重視しています。
非臨床領域のDXは、患者にとっても、大きなプラスになります。例えば当院では、検査等の事前説明をICTを用い、タブレット等で視覚的に訴える方式を用いて丁寧に説明することで、理解度が向上し患者満足度の向上につながっています。
医療は反復的な作業が多いので、医療従事者の負担軽減となるDX製品ならびにサービスを開発することが、持続的医療提供の可能性に貢献すると期待しております。
芦原教之 氏
医療法人徳洲会湘南鎌倉総合病院事務長
大学卒業後、株式会社常磐薬品工業へ入社。1997年より宇治徳洲会病院 医事課へ。2003年より宇治徳洲会病院臨床研修センター兼地域医療連携室(2004年より総務課兼務)、2007年より長野厚生連長野松代総合病院医事課勤務を経て、2008年湘南鎌倉総合病院総務課に入職。2019年湘南鎌倉総合病院事務長に就任。医療DX化を推進し、病院のショールーム化を目指す。
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